近年におけるロードバイクの大きな変革のひとつがディスクブレーキ採用車、すなわちディスクロードの台頭です。
すでに主要メーカーのラインナップはディスクロードに主軸を移しており、スタンダードになりつつあります。もちろん、急速に普及が進んだのは従来のリムブレーキに比べ明確なアドバンテージがあるからです。
ただ、残念ながらディスクロードを紹介する記事の多くが「ブレーキが良く効いてコントロールしやすい」あるいは「雨天でも制動力は変化しにくい」といった記述にとどまっており、まだまだ一般にはその本質が正しく理解されていないのが実情です。
ディスクブレーキを採用する最大のメリットは、
ロードバイクにとって最も重要な要素「パフォーマンスが向上」することにあります。
リムブレーキを採用する従来のロードバイクは、ホイールのリムの外周部をブレーキシューという部品で挟みこんで減速・停止させる仕組みです。
一方、ディスクブレーキはホイールの中心部に取り付けられた金属製の円盤をブレーキパッドで挟みこんで減速・停止させます。
リムブレーキ対応ホイールの弱点はブレーキングの負荷に耐えられるよう、リムを一定以上丈夫に作らないといけない点です。もちろん、そうするとリムの重量は重くなります。
一方で、ディスクブレーキ対応ホイールのリムは、ブレーキングによる負荷がかからないため、うんと軽く作ることができます。
ホイールのリムが重くなると、走行性能に大きな影響を及ぼす「慣性モーメント」が増大します。慣性モーメントは、中心軸より外側に重量物があるほど大きくなるからです。
慣性モーメントとは、回転方向にかかる慣性の事です。
では慣性とは何か? これは物体をそのままの状態で維持しようとする力のことです。
止まっている物質はそこに止まろうとし、動いている物質はそのまま動き続けようとする、その力です。物理の授業で習ったニュートンの「運動の第一法則」ですね。
他の条件が一定ならば、慣性モーメントの大きいホイールは、回転させるときに大きな力が必要で、また、止める時にも大きな力が必要です。
その反対に慣性モーメントの小さいホイールは、小さな力で回転させることができ、小さな力で回転を止めることが可能です。ペダルを踏めば瞬時に反応し、ブレーキを握れば即座に減速する、すなわち運動能力の高いホイールという訳です。
リムを軽量化することでレーシングバイクとしてのパフォーマンスを向上させる事こそ、ディスクロードが躍進したその本質的理由、核心にあたります。
加えて、ディスクブレーキ対応ホイールは、固定がクイックリリース方式から、フォークとの結合力が高いスルーアクスル方式となり、横剛性が向上しています。また、リアホイールのハブの規格も従来より、約10㎜ほど幅広の142㎜が主流になり、これも横剛性のアップに寄与しています。
同じグレードのホイールを比較すると、リムブレーキより、ディスクブレーキ対応ホイールの方が僅かに総重量が重いですが、実際に使ったときの走りの軽さ、下り路面でのブレーキの信頼性など、総合的な見地ではディスクブレーキの方が圧倒的にメリットが大きいのです。